私たちは西陣織を使った和雑貨ブランドAtelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)を展開しています。西陣織の歴史については別のページに纏めさせて頂いたので、こちらでは私たちが展開している商品に使っている絹織物について書きたいと思います。一言で絹織物と言っても様々な種類がありますが、ここでは私たちのブランドで使用している西陣織の絹織物についての話に絞らせて頂きます。
目次
絹とは?
*Kuebi = Armin Kübelbeck – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3038386による
絹(きぬ)は、カイコの繭からとった動物繊維である。カイコが体内で作り出すたんぱく質・フィブロインを主成分とするが、1個の繭から約800 – 1,200mとれるため、天然繊維の中では唯一の長繊維(フィラメント糸)である。独特の光沢と滑らかな質感を持ち、古来より衣類の材料(絹織物)などとして珍重されてきた。
*Wikipediaより
本物の繭って見た事ありますでしょうか?本物は中々無いかもしれませんが画像等では見た方も多いのではないでしょうか。形は楕円形で大きさは4~5㎝位と小さいですが、そんな大きさの繭から800~1200mも取れるんです、それだけでその糸の細さが判って頂けるのではないでしょうか。
本物の繭を用意出来たので画像で紹介します。形は楕円形で大きさはまちまちですが3~4㎝と少し小ぶりです。色は見ての通り白ですが、真っ白ではなく生成りに近いかと思います。振ると中でコロコロと音がします・・・これが絹糸になるなんてちょっとビックリですね。
絹には大きく分けて家蚕(カサン)と野蚕(ヤサン)の二種類あり、Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)で使うシルクは殆どが家蚕の方です。
家蚕は家畜化されている昆虫で、自然界には存在しない生き物です。野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物として知られています。元々養蚕は古代中国で盛んに行われて来たもので、様々な理由からその技術は国外へは出ませんでしたが、日本へは弥生時代から既に伝わっていたとされています。(諸説あります)
*有名なシルクロードと言うものがありますが、これは古代中国から陸路・海路を使って養蚕や絹の製法をインド・ペルシア方面に伝えていった所から来ています。紀元前1000年頃のエジプトから中国の絹の遺物が発見されているとか。
対して野蚕とはカイコと違って自然界に生息する昆虫から採取した絹糸の事です(自然界と言ってもちゃんと飼育管理されています、そこら辺にいる奴を取っている訳ではありません)一概には言えませんが家蚕に比べて繭の色にムラがあって染色しにくいですが、光沢は家蚕より有ります。ワイルドシルクとも呼ばれ家蚕の絹とはまた違った雰囲気になるので、今後商品として企画するかもしれません。
*カイコは個人的にはもふもふで可愛いと思うんですが、この野蚕に使われているヤママユガは苦手な人が多いかもしれません。蛾が嫌いな人は検索しない方が良いと思います。
絹織物とは?
絹織物(きぬおりもの)は、絹で織った織物のことである。しなやかで強く美しい光沢があるため、繊維の中でも最も珍重されてきた。丈夫であることから、矢や銃弾を防ぐ用途にも使われた。
*Wikipediaより
さらっと凄い事書いてありますね、矢や銃弾を防ぐとか。実際古代の日本では矢を防ぐ用に絹織物の衣を着ていたとされています。また何度か歴史上で銃弾から身を守ったと資料が残されているようです。
これは最近で言うとバリスティックナイロンと同じような感じかなと思います。バリスティックナイロンってご存じでしょうか?軍事用に開発された超高密度ナイロンで織られた生地の総称なんですが、防弾ベストの素材に使われていたり、引き裂き強度や耐熱性もナイロンとは思えないほど強力なのでナイフなどで切られても切れない(切れにくい)素材なんですが、生地自体の張りとコシが物凄いんですよ。ナイロンの繊維自体は非常に細いんですが、何本も重ねて太くし、更に生地の打ち込みを限界まで入れて織り上げていくのですが、これと同じようにシルクも繊維自体は細く、通常は何本も束ねて1本のシルク糸として使われます。そして打ち込みを入れて絹織物として織り上げると生地に張りとコシが同じように生まれます。
打ち込みも手機だと思うので、かなり入れられる筈ですし、それ位張りのある絹織物なら矢位防げるんじゃないかと。銃弾はどうでしょう・・・昔の銃だとそこまでパワーないのかな・・・?
とまぁシルクって凄いですねって話でした(笑)
絹の利点
〇真珠の様な美しい光沢
シルク繊維の断面は円形ではなく三角形になっています、これがプリズムの様な働きになり独特の美しい光沢を生み出します。まるで真珠のような光沢とも言われ古代より王族に親しまれてきた理由の一つです。
〇軽くしなやかで抜群の肌触り
これはシルク繊維自体が非常に細い為、織り上がりもしなやかで軽くなります。同じ天然繊維のコットンの1.5倍もの吸湿性と放湿性にも優れ、肌触りも抜群です。
〇熱伝導率が低く静電気も起きにくい
熱伝導率が低いので夏は涼しく冬は暖かい。アミノ酸で構成されているタンパク質を主成分としているので肌に優しく保湿性能も高いので、静電気が起こりにくい素材です。
〇非常に丈夫
繊維自体は細いですが、通常は何本も纏めて1本の絹糸として織るので、見た目以上の強度のある生地になります。ただし強度を上げる=生地の打ち込みを入れる事になるので、軽いという利点は少しスポイルされてしまいます。
絹の欠点
〇洗濯しにくい
Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)で扱っている商品では洗濯するような品目ではないので大丈夫だと思いますが、衣服だとなかなか通常の洗濯は難しいと思います。まずシルクは水に弱く、色落ちや縮み皺の原因にもなるので専門の業者に頼んだ方が無難です。
〇汗でシミになりやすい
これも上記の理由で汗染みとなりやすいので注意が必要です。
〇変色し易い
シルクは蚕が紫外線から身を守るために作った繭から糸にしたものです、有害な紫外線を吸収してくれますが黄変してしまいます。これは通常の生活をしていれば避ける事は不可能です。天日干しなどの直射日光は勿論NGですが、絹製品は徐々に黄変していくものとお考え下さい。太陽の光だけではなく蛍光灯下でも黄変は徐々にしていきますので、保管は冷暗所がベストです。
〇虫に喰われる
天然繊維の宿命です、保管時は冷暗所にシルク用の防虫剤と一緒に入れておきましょう。
〇値段が高い
上見たらキリがないですが、生産量が年々減って来ているので価格が大幅に下がるという事はないでしょう。購入される時は中間業者を挟んでいない所で買うのが、無駄に価格に反映していないのでおススメです。
絹鳴り
製品になった状態では難しいのですが、絹織物どうしを擦り合わせると「ぎゅっ・ぎゅっ」と音がします。これを絹鳴りと呼びます。シルク独特の表現です。これはシルクの繊維断面が円形ではなく三角形の形をしている為で、繊維どうしが引っ掛かりこの様な音色を奏でます。合成繊維の様な凹凸のない繊維だと鳴りません、絹鳴りがする絹織物は天然のシルクを使っていると思って頂ければ大丈夫です。
Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)の仕様しているシルク
Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)で使用しているシルクは全て天然のシルクを使っています。商品により若干他の繊維を混ぜる場合もありますが、基本的には経糸シルク・緯糸シルクのシルク100%の西陣織生地を使っています、ご安心下さい。
これからも西陣織を使った素敵な和雑貨をお届けすると共に、絹の素晴らしさもお伝えしていければと思います。